日居月諸

書き手:吉田勇蔵          ブログ「月下独酌」もご高読賜りたく http://y-tamarisk.hatenablog.com/  twitter@y_tamarisk

村上春樹氏のスピーチ『影の持つ意味』を読んで

村上春樹氏のハンス・クリスチャン・アンデルセン賞受賞スピーチ(10月30日.於デンマーク)の内容が新聞やTVで報じられている。一部のニュースしか見てないが、メディアは概してヨーロッパの難民問題を念頭においてスピーチを解釈し引用しているようであ…

村田沙耶香『コンビニ人間』がおもしろうて

芥川賞や直木賞の受賞作品を、それだけの理由で受賞直後に読んだことは今までなかった。ノミネートされる前に読んでいたとか、あるいは受賞して数年後に読む機会があった、ということは何度かある。 だが村田沙耶香『コンビニ人間』は例外で、受賞1か月後の…

藤田嗣治が描いた戦争画からの連想

デスク前の壁に、藤田嗣治作『カフェにて』の絵葉書を小さな額に入れて飾っている。パリのカフェでテーブルに頬杖をついて物憂げな表情を浮かべた若い女性が描かれている。藤田嗣治のトレードマークともいうべき乳白色の肌が黒いドレスとのコントラストで映…

岩田温著『人種差別から読み解く大東亜戦争』を読んで考えたこと

今年も8月のTV番組や映画は昭和の戦争を回顧するものが多かった。例年以上に多かったというべきかもしれない。70年目という節目の年であるからだけでなく、国会で審議中の平和安全法制整備法案への反対の声がマスコミ主導によって盛り上がっている流れ…

白日夢

暑いときも寒いときも、土砂降りの雨や大雪が降らない限り、私は日に二度の中長距離散歩を日課としている。不動産鑑定の仕事をしていた頃も、車を役所の駐車場に置いたまま、調査地点まで少々の距離があっても、時間の許す範囲で歩いて往復したものだ。 昔か…

煽る政治屋たち

安保関連法案が施行されると徴兵制への道を開くというデマが、にわかに声高に叫ばれるようになってきた。以前から片隅でぶつぶつと同じようなことを言っている人たちはいたが、大通りに出てきたのはここ1週間余りのことだ。 民主党の首脳部がどうやら、「徴…

死の宇宙に浮かぶひとときの生

昨日、東京藝大美術館で、『ヘレン・シャルフベック ― 魂のまなざし』展を鑑賞した。シャルフベック(1862~1946年)は母国フィンランドの国民から最も敬愛されてきた画家である。 シャルフベックの絵を観た後に思い浮かぶ言葉は、「傷」「黒」「子供」「生…

アンポッ、ハンタイッ!

戦後最大の国民運動と言われてきた1960年の安保反対運動の盛り上がり。人々は、この条約が成立すると日本はアメリカの戦争に巻き込まれると言って、大騒ぎをしていた。当時私は政治にまったく無知の中学生だったが、町のそこここに安保反対のスローガンとと…